本は何より手軽だ。小さく軽く、どこにでももっていける上に、紙の上のシャープな印字というのは、印刷誕生以来五百年以上の試行錯誤の末に洗練されきっている。対してコンピューターのディスプレイは、高精細になっているとはいえ、文字を読ませるのに適しているとはとても言えない。文庫本の半分程度の値つけが多いようだが、これをもし極端に下げたとしても、おそらくは売れないだろうと貫井氏は言う。また、あまり極端に値下げしてしまうと課金システムが維持できなくなってしまうので、それぐらいならただで公開したほうがましだということになる。職業作家としてはそこまではやりたくないし、やるべきではないというところだろう。しかしこんな困難な状況にあっても、貫井氏に今後の展望を訊くと、我慢は続いてもやめるつもりはないと、はっきりと答えがあった。理由の第一は、作家が出版社の力をまったく借りずに読者に自分の作品を届けられる手段だということだ。いままで作家は出版社の意向で自分の思い入れのある本を絶版にされたり、本当に出したい本を出せなかったりということを経験してきた。
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