お囃子の音と人の気配

2011.04.26

見るからに大きくて見栄えのいい桜の本の下には人が多く、にぎわっていた。そういうところはわざわざ避けるようにして、私たちはさらにどんどん奥のほうに入っていった。人影のないこぢんまりした桜の木の下に、ようやく私たちは腰を下ろした。Mは、また眠くなってきたのか、目をこすったり、ミルクの入った哺乳びんをチュウチュウ鳴らしたりしていたが、やがてウトウトし始めた。Mが眠ってしまうと、ようやく私は一息ついた。花見をしているのだという実感がはじめてわいてきた。だが、お弁当を広げながらも、いつMが目覚めて泣き出すかと思うと、気がかりでならなかった。それから四、五十分過ぎた。遠くに聞こえていた笛や太鼓のお囃子の音が、だんだんこちらに近づいてきた。そして、急に大きくなってきたかと思うと、目前にひょっとこの面が二つ並びながら、くねくねと体を動かし踊っている。お囃子の音と人の気配に、目覚めたばかりのMは、キョトンとしてひょっとこのお面を見上げているばかり。風が出てきたのでひきあげることにした。家に帰ってくるとどっと疲れが押し寄せて、やぐらコタツの中に足をつっこみ寝ころかっているうちに、いつの間にか三人とも眠ってしまった。
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