東大は文I〜文III、理I〜理IIIといった科類で入学するが、基本的に1、2年時(前期課程)には全員が駒場キャンパスで「教養学部」の教養教育を受けることになる。そして3年の後期課程からそれぞれの学科に進学することになる。その際に2年夏学期(3学期)までの成績をもとに学部学科へ分かれるシステムが、俗に「進振り(進学振り分け)」と呼ばれるシステムだ。基本的に「文I→法学部」「文II→経済学部」「理III→医学部」など、前期単位を普通に履修していればそのまま進学できる科類もあるが、その他の科類の場合、成績と進路希望によって、さまざまな学部への進学がコースとして考えられる。また、たとえば文Iから法学部以外の進学を希望するなど、通常の進学ルートと異なった選択も可能になるのだ。この東大独自のシステムは、考え方によっては猶予期間、つまり「モラトリアム」期間と捉えることもできよう。まず、最初の2年間(正確に言えば、2年夏学期=3学期まで)は、自分の科類に関係なく文系や理系、好きな科目を履修することができるのだ。大学受験の段階で「自分は将来、このコースに進みたい」といった明確な希望を確立させることは難しい。だが、大学に入った時点で、それこそ自分の専門分野を限定せず、さまざまな教養に触れることで触発されれば、その段階で進むべき道を最終的に決定することができるのだ。ある意味で、第2の「進学」と言ってもいい。しかも、高校時代の「得られる情報は断片的で、最終的な選択を行うにはまだ未熟」という時点での将来設計に比べて、大学生としての教養を身につけたうえでの設計は、より現実的・理想的とも言えよう。ただ、この「進振り」に関しては、当然のことながら多くの制約かおる。まず、教養学部の2年間(合計で4学期)のうち、振り分けの評価材料になる成績は、あくまで3学期(つまり2年の夏)まで。しかも2年の5月には学部のガイダンスが始まり、9月にはおおむね進学が内定してしまうから、実質的に「考える」期間は1年程度しかないこと。そして、通常コースと異なる進路を選択しようとすれば、やはり「成績」の面でかなり苦労する。また文IIIや理I、理IIのような決められたコースがない場合、さらに競争は激化するようだ。入学した後にも「進学競争」が待っている。合格したら4年間ノンビリ……というわけにはいかないのだ。